伊藤画伯のかわいい仏様たちの世界
仏画への道 - 京都AALA理事 伊藤慎一郎
一面緑の中、畦道をたどって行くと木立の中、塔が見えて いかにも斑鳩という風景がそこにあった。風情のある土壁、いまにも老いた農夫が出てきそうな半世紀ほど前の中宮寺近辺のこと。
最近知り合いが亡くなり、大和郡山に出向くことが何度かあり、昔のことを思い出した。
当時、中宮寺の弥勒菩薩は、暗い厨子に安置され、顔の輪郭が分かるには、なんときかかかった。
私にとっては初めての対面で、ただただ見るばかりで、案内された尼僧はいつまでいるのか心配されたことと思う。
それ以来、優しい眼差しが常に心のどこかあり、仏画を描くこととつながったと思われます。
いろいろな仏画に接して気付いたことですが、基本的に仏像は 飛鳥から鎌倉時代に造られていることです。
造られた時代背景は美術史家にまかせるとして、造らせた人は庶民の平穏を祈って造らせたわけではないのに 現代においても人々の心を感動させるのは、造者が打ち捨てられる者への悲しみを救う唯一の道として、仏像の表情と動作に救いを託したからではないかと思います。
その遺産に乗せてもらって仏画を描いているのですが、いまの時代に合った仏様の姿を表すのはなかなか難しいことです。眼を描くにも一本の線の太さや角度によって、表情が多種多様で同じ表情のものはなく、弥勒菩薩の眼差しに近づくには困難をともないます。
法隆寺中宮寺などは庶民には遠い存在(仏像も)であったのですが、地蔵菩薩については、より庶民に近かったようです。子安地蔵、刺抜地蔵、田植地蔵、親子地蔵、油係り地蔵等々、全国には八百ほどの異名地蔵があるそうです。
これらは庶民の切実な願い、お目かけくださいという叫びです。御利益と祈祷の内容によってこれからもいろいろな地蔵さまが出てこられるでしょうが、それによって、願いが叶えられることはないでしょう。しかし祈ることによって心の平穏は保たれるのではと思います。
伊藤慎一郎氏の仏画は京都AALAホームページでも販売を斡旋しています。
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伊藤慎一郎氏近年の主な仏画展
1993年 | 篠山大福堂ギャラリー(慈愛の仏画展) 京都国際ホテル(慈愛の仏画展) その他、個展3回 |
1994年 | 東京 シチズン・ローマンギャラリー(語りかけるガラス絵展) 京都 ギャラリー賛 にて個展 |
1995年 | 京都 清水寺にて(阪神大震災義援金を送る為の異彩画展) |
1998年 | 京都、滋賀、大阪のリビング新聞社にてカルチャー教室(ほほえみの地蔵絵)開講 京都 ギャラリー賛 にて個展 |
1999年 | 京都、篠山、東京にて個展 京都 松栄堂ギャラリーにて(ほほえみの地蔵絵展) |
2001年 | 京都 法然院にて (仏画、異彩画展) 仏教クラブチャリティーに作品出品 |
2002年〜2006年 | ギャラリー賛 法然院 京都美術工芸ギャラリーなどで個展 |
2007年〜 | ギャラリーミントで個展、穎展 |
2010年 | 篠山大福堂ギャラリーにて個展 京都 ギャラリーFにて京都AALA 穎展 本年第36回。 |